籾摺り(1)

磯田和秀

稲から米にするためには、籾摺りをしなくてはならない。

脱穀して穂から籾を外し、さらに籾殻を取り除いて(脱稃/脱ぷという)玄米にする。籾殻を取り除くこの作業を、籾摺りという。

自前の稲作において、籾摺りだけは、電気の力にたよらなければ、ほとんど手に負えない。農家は専用の機械を使う。たぶん10数万円くらいするし、大きいから置き場所にも困る。私たちは持っていないので、借りて使わせてもらうことになる。

「機械は使わない」などと決めているわけではない(使えるものはむしろ積極的に使う)が、できれば籾摺りも自力でやりたいという気持ちはあった。籾摺りは、機械が使われる以前には、木の挽き臼でおこなわれていたようだ(※)。石臼はよく見かけるが、この籾摺りは売っているのを見たことがない。作るしかない。目指しているのはこの記事の一番上の画像のようなものだ。

実際に作った人がテキストを販売していたので、年明け早々、それをもとに作ることになった。七面倒くさいことはいいから作り方を教えろという人は、こちらを見ていただきたい。自然風というサイトをしておられる方が試行錯誤の上で作った籾摺りの制作マニュアルである。1部1000円。

大工をやっているカズマさんが、樫の木を持っているという。樫は堅いと評判なので、この用途には最適だろう。

ただ、こういう作業から始めることになるとはあんまり思っていなかった。

クレーンで吊らないと、移動もできない。

この樫は、去年の夏ごろ伐られたものをもらって置いておいたそうだ。時期があまりよくなかったので、割れ目や皮のほうからカビなのだろうか、少し変色していた。家具にするわけでもないので見た目はどうでもいいとしても、強度は大丈夫だろうか。また、乾燥も十分とは言えないので、できてから割れる可能性もある。みんな、心に不安を抱えながら、後には引けない制作作業に取り掛かる。

まず、輪切りにする。

材が太いので、めったに使わないという長いバーの付いたチェーンソーを持ち出してきた。なんとMade In West Germanyと書いてある。西ドイツ製ということは30年以上前のものだ。しかしエンジンはすぐにかかり、勇ましい音を立てて太くて堅い樫を切っていく。

樫は堅い、と知識としては知っていたが、実際に触ってみると「堅いとはこういうことか」と感心する。ホームセンターで見るSPFや杉、ヒノキなどとは、手触りからして明らかに違う。持ち上げたわけでもないのに重さまで手に伝わってくるようだ。

切ったそのままでは大きすぎるので、中心を少し外したところで直径30センチの円を描き、それに沿ってまずはヨキで大雑把にはつる。堅いので、ヨキを当ててその上からかけやで叩く。堅いのでヨキがはじかれる。この後もしつこいくらい「堅い」と書くのでうざいとは思うのだが、この日を含めて三日間、ひたすらその堅さと向き合うことになったので、書かずにはいられない。ご容赦願いたい。

こうやって叩くが、最初はヨキがはじかれる。堅くて材に刃が食い込んでいかない。懸命にかけやを打ち下ろして何とかはつっていった。下の臼はそうやって形を整えていった。

しかしカズマさんは普段から薪割りに慣れているせいか、かけやは使わずにヨキを正確に同じ場所に叩き込んでこの状態にしてしまった。さすがだ。

さて、扱いやすくなったところで、チェーンソーを使って丸く形を整えていく。

上臼、下臼ともに同じようにして丸くし、重ねてみた。

今、この画像を見ながら、このときもう少し慎重だったら…と思わないでもない。しかし、10時から始めてここまでできあがったときには、午後2時を過ぎていた。日の当たらない屋外の作業で、火を焚きながらとはいえ寒さに耐えながらだったので、これを見たときは、堅くて重い樫がやっと人間の手に負える存在になったとホッとするしかなかった。なぜ、この画像を見て悔やむことがあるのか、そのわけは次回。

ところでこのときはつった木片は薪として燃やしもするが、なにしろ堅いのでくさびのいい材料にもなる。手に持つとみっちりと詰まった感じと堅さと重さが心地よい。持ってるだけでうっとりする。

また、「矢」というものも作った。伐採するとき、追い口に差し込み打ち込んで、木を倒すのを容易にするための道具である。関西人なので「やー」と発音する(「蚊」を「かー」、「歯」を「はー」と言うが如し)。

臼の本体がおおよそできたところで、上下をつなぐ棒を中央に設置し、実を入れるための穴をあけ、さらに最上部をトリマーで削っていく。文章では伝わりにくいので画像で。

どこからどう見ても臼である。この日はここまで。

※機械化される以前の籾摺りの方法には、我々が作っている臼以外のタイプの臼でやる方法の他にもいくつかあるらしい。後日、気が向いたらそのあたりを探った記事を書くかもしれない。

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